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        ハビエル・サビオラを追いかけてきたブログ*引退後も進行中(笑)

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寄り道〜スペイン語とアルヘンティナと

9日にドレンテのメッシに対する発言の記事(Marca)を読み、その後の日本での報道に少し疑問を感じました。スポナビ、Goal.com等に書かれていた記述で気になる箇所があるので、それだけ書いておきます。

記事の内容に関しては特に興味もありません、2人のファンでもないので。ただ、日本での読者の反応を見ていてスペイン語やアルヘンティナについてまだあまり知られていないことも多いのかな、と思ったので、わたしがほんの少しだけ知っていることをここに書き留めておきますね。4日間に渡って書いたので、ところどころ内容が重複したり、まとまりのない箇所がありますが、キリがないのでもうアップします(笑)。



このエントリの一番下にわたしが読んだニュースサイトのlinkを貼っています。その中から気になる表現をいくつか。

「ネグロはラテン語で黒を指す単語で、黒人に対する蔑称として知られている。」


① ラテン語について知っている事はわずかですが、少なくともネグロという語はラテン語ではありません。恐らくこの記者は日本語のウィキペディアで調べたのだと思いますが、残念ながらそのウィキペディアの記述が間違っています。ラテン語のniger(黒い)という意味の形容詞があり、その対格のnigrumからポルトガル語、スペイン語のnegro(ネグロ)という言葉が派生した、という説が有力です。ちなみに英語になったnigger(ニガー)は、同じラテン語からフランス語に派生しアメリカに入って来た言葉で、20世紀あたりから白人が黒人を侮辱する時に使われ出したため、今では差別用語となっています。

② ラテン語で…という間違いの部分を除いても、これでは非常に書き方が曖昧で不十分です。筆者はネグロという単語そのものが蔑称として知られている、という意味で書いているのでしょうか。そもそも英語圏のNegro(ニグロ)と同義として捉えているのでしょうか。negroのつもりでしょうか。Negroのつもりでしょうか。

スペイン語、あるいはポルトガル語でのnegro(ネグロ)という語自体に、侮蔑のニュアンスはありません。例えば黒人を意味する単語はnegro(ネグロ)、あるいはraza negra(ラサ ネグラ)と言います。razaは人種という意味です。もちろん、これらの国の言葉でも相手を侮辱するつもりで呼びかけに使えばそうなります。しかし、最初から単語にそのような意味が含まれているわけではありません。これでは、読者にネグロという語そのものが黒人に対する蔑称である、という印象を受けさせます。

③ もし、北アメリカにおけるnegroという言葉の由来、アメリカ黒人に対する呼称について関心がある方は、1998年に広島文教大学紀要に掲載された「アメリカ黒人の呼称について」という藤本則夫氏の小論があります。分かり易いですし、PDFで読むことができますので下記アドレスからどうぞ。ご参考までに。

http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/handle/harp/5588


また、日本のニュースサイトに関してですが。

「(マリ代表MFの)マアマドゥ・ディアッラも、彼を“ネグロ”と呼ぶイグアインとエインセによく腹を立てていた。ただ、あくまで一時的なことだったようだ」


① スペイン語の原文では、Al final dejaron de decirlo.「結局、彼らは言うのをやめたよ」と書かれています。スペイン語の過去形は、すでに終わったこと、過去の事実を表します。つまり、この文章の中に「ようだ」というニュアンスは一切ありません。元のオランダの記事には、「はじめはそう呼んでいたけれど、嫌がったらやめたよ」と書かれているようです。

② スペイン語の記事を読むと、「(ドレンテは)メッシが人種差別主義者ではないとわかっている上で」という記述がありますが、日本語の記事にはどこにも訳されていません。なぜでしょうか。

以上が、記事を読んでおかしいと感じた部分です。
日本語訳された記事は、内容をまとめるというか端折られるのは多少仕方ないと思いますが、その処理に好意的あるいは悪意的な意図を挟むのは好ましくないと個人的に思います。紹介するのなら、あくまで原文に忠実であるべきです。ニュースというのならば。

今わたし自身がサッカーを見ていて、スペイン語の記事を毎日チェックしていたので今回たまたま目に付いたのですが、これがロシア語や中国語だったらさっぱりわからないのでそのまま鵜呑みにしてしまうだろうし、原文まで遡ろうなんて考えません。そう考えると、日本語のニュースサイトを読むのが少し憂鬱になります(苦笑)サッカーだけじゃないんだろうけれど。でも気づいた人が間違いを指摘するのもネット上では必要かなぁと思います。是正していかないと、いつまでも変わらないでしょうしね。


ここから先は、アルヘンティナの習慣やスペイン語についてつれづれと書きますね。

* * *
アルヘンティナでは、親子や恋人同士はもちろん、兄弟や友人間で相手が白人でも黒人でも、親愛の情を込めて“negroネグロ”、“negritoネグリート”、女性に対しては“negraネグラ”、“negritaネグリータ”と呼びかけます。サビオラは小さい頃からご両親にずっと愛情を込めて“negro”、“negrito”と呼ばれて来ました。この呼びかけの場合は親からなら、(おまえ、おチビちゃん)、恋人なら(愛しい人、あなた)といった感じの意味になりますが、もしスペイン語を全く知らない人のために注釈をつけるなら、(黒い)という語の原義を書くでしょう。ただし、それは語本来の意味であって、呼びかけの意味ではありません。

また、あるサイトではネグロの語の後ろに注釈として(クロンボ)としていますが、これもあくまでも記者がドレンテの心情を再現しようとした上での限定的な注釈です。「この場合、クロンボを意味する」くらいにするのが無難でしょう。

例えば、英語で恋人に「Hi, honey!」と言った場合に、(やあ、ハチミツ!)と呼びかけているわけではなく、夫や子どもに親しみを込めてあなた、お前と呼びかけているわけですから、この場合honeyの後ろに(ハチミツ)と注釈をつけるのはどう考えても苦しいですよね。でも英語を全く知らない人に注釈を付けるなら、まず(ハチミツ)という原義を紹介するでしょう。ただし意味は違う。それと同じことです。スペイン語ではこうした言い方がそれこそ星の数ほどあり、“Mi bonbón!”と言えばやはり恋人に対する愛情込めた呼称であって、あえて訳すとしたら(マイ・ダーリン!)くらいの意味です。これを言葉の意味をそのままちゃんと書けと言われれば、(私のチョコレート菓子!)になります。もし訳がこうなっていたら、なんのこっちゃ、ですよね。

スペイン語圏で驚いた時に発する“¡Hombre!”は訳せば(ええっ!)とか(わあっ!)などになりますが、元々の意味は(男、男性)です。話し相手が女性でも用いられますが、それに気分を害する人はいません。また、この「hombre」をイエスかノーのあとに言えば、強調になります。スペイン語で「No, hombre.」と言えば、(えー、違うよ)くらいのニュアンスです。ここでは完全に“男”という意味はなくなります。「¡Hola, negro!」も同様に、(やあ!)という意味であって、(やあ、黒人!)ではありません。英語の「Hey, man!」のようなものです。欧米では英語のnegroと結びつけられるので使用しない方が無難ですが、そういった理由だけで南米の文化や言葉の習慣を否定するのは、あまりに性急すぎると思います。

人は自分の常識が世界で通用する常識だとつい考えがちですが、自分の知らない文化や習慣を知ることも大事ですし、まずは相手の話を聞く姿勢を持つのが良識というものではないでしょうか。わたしがこう書くのは、日本では特に、外国語と言えばまず最初に英語に慣れ親しむ環境のため、どうしても英語偏重主義とでも言うような語られ方をよく目にするからです。

言葉というものは、発する側が込めた感情を含んで初めて愛情か、侮辱かなどの意味を為しますし、また、どの語も本質的に、相手を誉める言葉にも侮蔑する言葉にもなり得ます。常に言葉はその二面性をはらんでいるはずです。先ほども書いたように、アルヘンティナではネグロという言葉を相手の人種に関係なく親愛の言葉として、あるいは恋人に呼びかける時にも使いますから、そうした時にネグロ=クロンボでは意味が通らなくなります。もちろんアルヘンティナの人たちも、この呼びかけを相手が嫌がると知ればやめます。同じ言葉でも、どのような状況で誰から言われるかによっても、受け止め方は変わってきますよね。あるいは最初から相手の人物に嫌われていたら、何気ないひと言でも悪意があると勘ぐってとられるかも知れません。受けとめる側にどれだけ余裕があるかにもよるでしょう。

もうひとつだけエピソードを紹介しますね。2001年8月、サビオラの父親であるカッチョさんの危篤の知らせを受けて、バルサのキャンプでスイスにいたハビがブエノスアイレスに急遽戻りました。病室に着いた時、カッチョさんはベッドの上からハビを見てこう言ったと新聞に伝えられています。

「Hola, negrito.(オラ、ネグリート)」

…わたしにとって、今でもスペイン語の「negrito(ネグリート)」は、とっても大切な言葉の一つです。


ただし、これらの習慣がすべてのスペイン語圏で通用するとは限らないようです。お隣のチリでもその習慣がわからない、と言う人もいますし、スペインでは一般的ではないですね。同じスペイン語でも、場所が変われば意味も変わりますし。

例えば三菱の車、「PAJERO」は南米のヤマネコからとった名前だそうですが、英語読みでパジェロと読みますよね。もしもスペイン語圏でこの名前のまま売れば、かなりのひんしゅくを買うでしょう。スペイン語圏では卑猥な意味になるので、「Montero」と名前を変えて販売しているそうです。また、スペインではタクシーを捕まえる、などと言う時に普通に使われる「coger」という単語は、南米、特にアルヘンティナで使用したらとても下品になるので、「tomar」を使います。逆にスペインで日常よく使われる「tío」は、スペインでは(あいつ、やつ)という意味で、そんなに品の悪い言葉ではありませんが、アルヘンティナではあまりそういった意味では使われません。この語の元の意味は(叔父、伯父)で、南米ではこちらの意味の方で主に使います。アルヘンティナでtíoに当たる言葉はchico(チコ)でしょう。でもスペインではこの言葉は元の意味の(子ども)という意味になります。

こうした文化の違いは特に日本人にとってややこしいですけれど、1つひとつ、確認していくしかありません。でもわたしは、それが楽しいことだと思うんです。わたしは10年前ほど前にハビエル・サビオラという1人のフットボール選手を知るまで、スペイン語のことも、アルヘンティナのこともほとんど何も知らなかった。それが彼のフットボールを見てきただけでいろんなことを聞いたり、知ることができた。それはもう、ただただ楽しかったです。サビオラを知らなかったら今頃何していたかな、と想像することもあるけど、もうその時間が長過ぎてわかりません。ほかの何かにしても、きっとその何かに夢中になっていたと思うけれど、サビオラと出会って本当にラッキーでした。…皆さんもきっとそうでしょう?(笑)


最後に、MarcaとASのコメント欄に出ていたスペイン人の方と、アルヘンティナの方のコメントを紹介しておきます。もちろん様々な視点からの意見が出ていますので、これが代表的な意見というわけではないですが、いろんな声があるということは知っておいて損しないと思うので。

Ribespo
Los argentinos siempre llaman cariñosamente así a la gente: negro, gordo, flaco, etc. Si te molesta solo tienes que decírselo.


これはスペインの方のようです。

「アルヘンティナの人たちはいつも愛情を込めてこう呼ぶよね、ネグロ、ゴルド、フラコ…。もしそれが嫌なら、そう言えばいいんだよ」


ゴルドはそのまま訳せば太っちょ、フラコは痩せっぽちです。これらも恋人間でよく使われます。「Mi gordo!」と言えば「わたしの愛しい人!」となります。もちろんデブと言っているわけではないですし、相手が太っていなくても関係なく使われます。


108 El hincademessi - 10-05-2012 - 05:32:53h
yo soy un negro y orgulloso de ser negro,me encanta cuando me llamen negro,,vivo en argentina es muy lindo en mis oídos cuando las argentinas me llaman morocho,,es de cariño no hay nada mal en eso,los negro muy fuerte en este mundo , me siento muy bien con mi color,yo esperando Messi en buenos aires para que el me llama negro,si yo tengo suerte verlo..Messi es mi ídolo,,es el mejor del mundo..aguante Messi...

「僕は黒人で、黒人でいて良かったと思っている。だからネグロと呼ばれるのは大好きだよ。アルヘンティナに住むのはとても素晴らしいこと。嫌いなのはアルヘンティナの人からモロッチョ(浅黒)と呼ばれることだね。これも愛情から来ているから悪気はないんだけれど。この世界に黒人は大勢いる。僕は自分の人種にすごく満足しているし、メッシが僕のことをネグロと呼ぶためにブエノスアイレスに来てくれるのを待ってるよ。もし彼に会えるのなら…。メッシは僕のアイドルだ。世界一だよ…頑張れメッシ…」


ちなみにサビオラはご両親から“モロッチョ”とも呼ばれていました。
きっと朝から晩まで外でサッカーしていて、真っ黒だったんでしょうね!
言葉にもTPOですね。


* 参考 *

元記事のLink先:

*オランダのnusport:nusport.nl

*マルカ:Drenthe: "Messi me llamaba 'negro' cuando jugaba contra él"

*AS:Messi niega los insultos racistas a Royston Drenthe

*Yahoo/スポナビ:エバートンのドレンテ「メッシは僕を“ネグロ”と呼んだ」

*Goal.com:ドレンテ、メッシとの問題を語る




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by la_fraise7 | 2012-05-13 17:34 | Noticias | Trackback

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